50MHz ミキサー
3代目の ミキサー です
2000年5月に製作し、2008年6月迄に3度マイナーチェンジしました。
回路の説明
スペアナ波形
複同調回路の調整
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各段の動作説明
- 最前段増幅器(2SK241)について
- 2SK241は、ALCを深く掛けることが出来る具合の良いFETです。
この回路でALC制御電圧を0Vから−700mVにすると、ゲインリダクションは−6dbになりました。
- 9MHz SSB変調器から受けた信号を、VRを使用してユニット全体のレベル調整器にしています。
RFを扱う回路にしては安直でちょっと恥ずかしいですが簡単で実用的です。
- ただ考え及ばず、入力端子を75Ωでターミネーションしたことは問題でした。
変調器の出力をローインピーダンスのラインに送り出すアンプの立場から見れば、パワーマッチングをしないで低歪,高レベルを要求されても、貧弱なソースフォロワアンプでは満足に送り出すことは出来ません。
今回はSSB変調器の出力段を3パラにして対応しましたが、次回は配線の長さが短いところなのでターミネーションをやめようか?と考えています。
- ミキサー(CA3026)回路について
- CA3026は昔からある高周波用差動I.C(Twin differential I.C)です、残念ながら定電流回路が附属していません。
簡単な回路にしようと、2つの差動回路を直結して(ピン3とピン9を直結して)500オームで接地したら発振したので図の様にしてゲインを下げました。
- ミキサーI.C(CA3026)出力に複同調回路を挿入してスプリアスの防止をしています。
回路は簡単ですが、うまくやると非常によい帯域通過特性になります。
ただし、欲張って広帯域にしようと教科書に沿って計算してみると、1MHzの帯域を得るだけでも実現するのが無理なHigh L, Low Cにしなければなりません。
入手し得る部品でやらないと出来ませんので、計算値は無視して可能なところで組み立てて調整しました。
- バンドパス特性は50.0MHzから52.0MHzまでの出力偏差が0.5db以下の優秀な特性になりました。
- キャリアーヌル調整を可能にしましたが、その必要はありませんでした。
- 複同調回路の後段バッファー(2SK241パラ接続)について
- ミキサーの後段バッファーは、2SK241をパラレル接続し、終段との結合はトリファイラートランス使用となりました。
- 後段との無理な結合を補償するため多めにIdを流し、充分なドライブパワーが得られるように留意しました。
- 終段増幅器(2SC1426)回路について
- 最大出力は300mW(PEP)あります。低歪で使用したいので100mW(PEP)出力に抑えています。
- 許容コレクタ損失が小さめのTrなので、A級動作とせず入力信号レベルに合わせてIcを容易に大きく変化させることが出来る様に、エミッタ・ベース両回路とも直流抵抗値を低く設定しているので、熱暴走の起き易い回路であることは否めません。
熱暴走防止の対策は、エミッタに挿入した1オームの抵抗と、ベースバイアス電流を決定するダイオード(1S1585)をコレクター放熱器に貼り付けた温度補償の、2つの方法に頼っています。
- 終段2SC1426が発振しました。非常に高い周波数の寄生振動らしいものでした。
フェライトビーズをTRの足に入れても止まらないし、直線性よく,高出力が欲しいステージなので、直列に抵抗を入れるなどの安易なことができません。
コレクターに50MHzの共振回路を背負わせて、よいかたちで発振止めが出来ました。
- ALCの必要性について
- トランジスタで構成した送信機では、温度変化に起因する出力変動は避け難く、何処かで補正をする必要があります。
本機は回路機能ごとにユニットを分けているので、製作計画時からこのユニットにALC機能を受け持たせようと考えていました。
- 実験を重ねる内にこのユニットが最も出力変動の多いユニットであることが分かって来ました。
考えられる要因は、UPコンバーター(ミキサー) 電力増幅器など変動要因の多い回路があり、
更に2つのバッファー回路を通過する等々です。
- 温度変動に関しては、周囲温度が 6度Cから30度Cまで変化したとき3db程度変化します。
温度上昇でゲイン低下となります。
- ALC回路の動作について
- ミキサー出力を規定出力(100mWPEP)に保つようにしています。
- 終段出力をP-P検波器に接続して包絡線のP-P値を検出し、初段I.Cで必要レベル迄増幅します。
- 後続ツェナーダイオード(RD5.6)の降伏電圧を超えた時点でALC制御電圧が発性し、次段のI.Cへ送り増幅(6db)されます。
- 必要なレベルに増幅されたALC制御電圧はダイオード(1S1585)を経由して時定数回路へ入り、ミキサー初段(2SK241)のゲートバイアス制御電圧となります。
- この回路でALC制御電圧を0Vから−700mVにすると、ゲインリダクションは−6dbになりました。
- ALCの入力レベル対出力レベル曲線の、スレッショールドより上の傾斜は10:1よりも平坦でした。
これ以上平坦にするには検出の定電圧ダイオードの感度の高いものを使用するしかなく不可能でしょう。
- 送信開始時の、ミキサーユニットのゲインが一番高い時、ゲインリダクションが−4dbになるように入力レベルをセットしています。
- 送信開始してすぐに−2db程度ゲイン低下するので、落ち着いた後はピークレベル時のゲインリダクションは−1dbから−2dbぐらいです。
- 当初の目論見では、出力レベル検出用P-P検波器から、PEPレベルを持続したDCの値で取り出そうとしたのですが、時定数が0.5secぐらいは必要ですし、ダイオードの出口に入れるCの値が大容量になり、出力回路に挿入すると許容できないぐらい歪が増加しました。
実験の結果 Cの値は100PF程度なら歪の悪化は辛抱できると分かりました。
- 考え直して ここでは出力のエンベロープのP-P値だけを検出して1段目のI.Cで増幅し、ツェナーダイオードの降伏電圧をスレッショルドレベルとして、超えて流出したレベルを増幅・整流してDCとし望みの時定数に整えることにしました。
- ALCの時定数は アタックタイム:0.8msec リカバリータイム:0.68sec いずれも推定値です。
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簡易スペクトルアナライザーで観測した、Audio 2Tone入力 105mW出力時の波形です
(2.5KHz以下と20KHz以上の波形は測定器のスプリアス信号ですので無視してください)
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複同調回路の調整について
複同調回路の調整は、最初にきっちり作ってしまうとどうにもならないことになりますが、調整し易いように作り、要領が解ってくると、アマチュア的で結構面白いものです。
私がこのユニット製作時に行った方法はほぼ次の通りです。
-
2つの同調回路をM結合しないように離しておいて、先ず1次側の同調回路を共振させ、次に1PF程度のCを4つ5つ直列にしたもので2次側にルーズカップルして2次側を共振させます、ここで複同調回路の帯域特性を調べてみると、臨界結合点に達しているか、未到達か判ります。
- レベルがさっぱり上がらないでピークが1つないし2つ出たら疎結合です。
- レベルが勢いよく上り2つのピークが遠く離れて出たら過結合です。
- レベルが勢いよく上りフラットなところが広くなったら丁度よい結合度です。
- 疎結合のときは直列のCを1個づつ減らしていくとよい所へ来ます。過結合の時は逆にします。
- 私のは2つのコイルを密に近づけたら丁度よい所へ来ました、これはM結合ではなくC結合でしょう。
- 意図した帯域の曲線を得るには、少々マニュアックな作業も必要になることがあります。
- 結合容量が決まった時点からのチューニングは反対側のコイルを1Kオームくらいの抵抗でシャントしてから調整する、これは常道です。
- 2つのコイルのそれぞれを高抵抗でシャントしてコイルのQを少々変化させてみるとか、
- 2つのコイルの共振周波数を微妙に変えてみるとか、方法は色々考えられます。
- スイープゼネレーターがあれば素早く出来るでしょうが、局発の周波数を上下すればよいのでその必要はありません。
- 出来上ったコイルはアラルダイトで固めて基盤に糊付けしていますが、安定で経時変化はありません。
- コイルはシールドケース入り IFT を利用すると、周囲の影響を受けず調整し易いと思います。
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使用した測定器
Audio 2トーンゼネレーター 自作
9MHz 2トーンゼネレーター 自作
VHF可変減衰器 ヒューレットパッカード
P−P検波器 自作
テスター 1 ソアー社 3120 DIGITAL MULTIMETER
テスター 2 三和電気 C-505(50Kohm/V)
トランシーバーの受信部 自作
Demodulator 自作
パソコン 富士通 NB14B
AD−DAコンバーター IO-DATA社 DAVOX及びソフトウェア(Sound it)
参考にした文献
山 村 英 穂 著 トロイダル・コア活用百科 CQ出版社刊
トランジスタ技術SPECIAL No.17
特集 OPアンプによる回路設計入門
回路の説明
複同調回路調整
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この項終り